代々受け継いできた、酒米を和釜で丁寧に蒸しあげ、
醪は全量「槽搾り」で搾ります。
手間を惜しまず、永平寺町の伝統産業である
昔ながらの酒造りを継承していきます。
水…清流の町永平寺町の吟醸造りに
最適な超軟水の仕込水
米…五百万石、さかほまれ、九頭竜など、
地元・福井県産の酒米品種を中心に使用
また、十一月中旬からの「寒造り」を基本とし、
時代を追わず、自然に寄り添った
丁寧な酒造りを行います。
酒蔵見学や学校の校外学習などを通じ、
酒造り文化を伝えていきます。
また、地元農家や大学との商品開発にも
積極的に取組みます。
朝、7時。甑から蒸気が上がり、蔵全体が蒸し米の香りで包まれます。
田辺酒造では、今も、往年受け継がれてきた大・小2つの「和釜」を使って、酒米を蒸しあげています。
早朝、釜屋(かまや)と呼ばれる職人が、和釜に水を張り、下から火を熾します。
時間をかけて、乾燥した天然の高温蒸気により、甑内の米は、酒造りに最適な「外硬内柔」の蒸米になります。
田邊酒造では、酒造りに最も重要な工程が、洗米から蒸しに至るまでの原料処理にあると考えています。
特に、洗米・浸漬時における米の吸水率は、その後の麹作りやもろみの出来に大きな影響を与えるからです。
通常、大吟醸クラスで行っていた「限定吸水」。
このやり方を純米酒以上の特定名称酒の酒造りで行っています。
酒米を10kgごとに小分けし、手洗いします。
酒米の品種や精米歩合、その日に使う水温によって、その都度、吸水速度が影響を受けるため、ストップウォッチを使用して、
洗米・浸漬時間に細心の注意を払っています。
様々な酒造工程の中でも昔より、麹造りは「一番の要」と言われてきました。
越前岬の麹造りは、造り手の五感をフルに使い、二昼夜かけて目指す酒質に合わせた麹を造っていきます。
麹菌を繁殖させるための室(むろ)と呼ばれる製麹室は常に30℃以上に保たれています。
その中で、菌糸の破精まわりや米の水分調整、品温管理を機械に頼らず、昔ながらの人の手によって管理しています。
越前岬のもろみは、本醸造から大吟醸に至るまで、約1ヶ月間に及ぶ長期低温発酵を行っています。
仕込みのピークである12月〜3月中旬までの寒さは、長期低温発酵には最適な舞台を整えてくれ、
1ヶ月間じっくりじっくりと赤ん坊をあやす様に、発酵を促していきます。
長期低温発酵を行うことにより、「雑味を抑え、透明感ある飲み口と骨格のしっかりした米由来の旨み」を引き出します。
生原酒はもちろん、加水や火入れ処理後の熟成酒としても味の骨格はぶれることなく、深みを増した理想的な味わいになっていきます。
このような吟醸造りの理想的な仕込みが出来るのも、「白山水系に由来する軟らかな仕込み水」、
「和釜によって丁寧に炊き上げられた蒸し米」、 「南部流の理想的な突きハゼ麹」といった蔵のある環境と、
先代杜氏から引継いできた伝統技法があってこそだと思っています。
約1ヶ月間に渡り大事に造り育てた「もろみ」を酒袋に入れ、ゆっくりと積み重ねていきます。
「槽搾り」と呼ばれる昔ながらの搾り方で、 雑味が少ない柔らかな酒質に仕上がります。
プレス式の機械で搾る方法に比べ、搾りに約3日間を要する上、酒粕の割合が高く(清酒として搾りきれる割合が少ない)ので、
高級酒の搾りに用いるのが一般的ですが、田邊酒造では、本醸造から大吟醸に至るまで全量この方法を用いています。
時間と蔵人の労力はかかりますが、3日間の時間帯によって「あらばしり」、「中取り」、「責め」など、1本のもろみの搾りでも
様々なタイプの味を楽しむことが出来ます。